イージーマネー(snabba cash)は救いのないストーリーが印象的なスウィディッシュやくざ映画で一見単純そうだが、焦点は案外深いところにある。
主人公は三人いて、グランドホテル形式で進行されていく。
家族思いだが犯罪を繰り返す脱獄者のホルヘ。
上昇思考の高い貧乏学生ヨハン。メインキャラクター。
別れた妻がドラッグ中毒で、小さな娘を引き取らなければならなくなった用心棒のムラド。
ストックホルムを舞台に、この三人が巻き込まれていく事件を主に描く。
ホルヘは刑務所にいたが、脱獄を成功させた。家族思いだが、不器用なのかあるいは性分か、犯罪を繰り返す。最終的には逃げおおせる。
ヨハンは、昼間大学に通う傍ら、貴族階級の友人たちと交際するために深夜タクシーやテストの代行をしたりして、稼ぎを得ている。上昇思考が高く、上流社会へすぐにでも仲間入りしたそうだ。結局金のために仲間を裏切り、それもうまくいかず、最終的には刑務所に収監される。
このホルヘとヨハンの立場の入れ換えがストーリーの軸になっている。
ホルヘは刑務所から外へ、ヨハンは外から刑務所へ。接点がなさそうな二人だが、このキャラクター設定には二人の大きなシーソーゲームが仕組まれている。そして二人の共通点は金と女兄弟だ。
ホルヘは妹が子供を妊娠していることを知り、喜んだ。麻薬取引の大仕事をして金をせしめ、幸せに上乗せしたいようだ。
ヨハンには姉がいて、行方不明になってしまっているという。上流社会に入り、このうだつの上がらない人生から脱出したがっている。
しかし二人とも、思うようにうまく事が運べない。大金を稼ぐためにイージーな方法を選んでしまうからだ。
ホルヘは最終的に妹や家族との幸せな暮らしを刑務所の外で得ることができた。
ヨハンは最終的に刑務所にいき、想いを寄せてくれる彼女が来ても、彼女に対する想いを口にすることはできなかった。代わりに、腕に彫られた姉の名の入れ墨を見つめた。ここのヨハンがなにを考えたのかが今回の焦点になる。